『“経験ゼロ”から始める AI時代の新キャリアデザイン』は,AIとの関わり方を考え,そして,AI人材として活躍するためのキャリアデザインについて学ぶことができる一冊です。
目次
AI人材としてキャリアアップしたい人におすすめ
本書は,AI人材としてキャリアアップしたい方におすすめです。これまでの「AI」について書かれてきた本(広く浅い知識や専門書など)とは異なり,役割や職種ごとに「どんなスキルが必要とされるか」「どういうエクササイズをするのがいいか」についても解説されるので,自分の進むべき道がより具体的に見えるでしょう。
『AI時代の新キャリアデザイン』の目次
本書の構成は,以下の通りです。
- 第1章:ニューノーマルとこれからのAIビジネス
- 第2章:今の職場や業種でキャリアアップするAIシナジスト
- 第3章:AI人材に求められるスキルとエクササイズ
- 第4章:データサイエンティスト,AIビジネスデザイナーになる
- 第5章:ゼロからの「転向」に成功した人たち
- 第6章:非IT起業にいる人たちのキャリアデザイン
第1章では,新型コロナウィルスの感染拡大によるビジネスの世界の変化,たとえばAI業界だったり,リモートワークの普及に伴う「社会の二階層化」など,そして,AI人材の概要などについて学びます。
本記事をご覧の方(おそらくAIについて興味がある方)がもっとも参考になるのは,第4章です。ここでは,データサイエンティスト,AIビジネスデザイナーなど具体的な職種についての理解を深めます。
そして,第5章では,実際にゼロからAI人材として転向した人たちのケーススタディも紹介されています。
ニューノーマルとこれからのAIビジネス
コロナがつくりだした「ニューノーマル」
新型コロナウィルスの感染拡大によって,ビジネスの世界はどのように変化したのか,本書では3つのポイントをあげています。
- コロナ禍でクラウド化,デジタル化は進んだ
- アフターコロナになってもリモートワークは進んでいく
- 二階層化が進むなかでAIを活用できる人材の価値はさらに高まる
リモートワークへの対応が進めば,働き手側が自分のライフスタイルに合わせて勤務先を選べるようになると言います。本書では,著者がCEOを務めるパロアルトインサイト社の例をあげています。
私がCEOを務めるパロアルトインサイトでは,日本の大学の大学院に在籍している研究者から,大学院を出たあとには「地方の山間部で暮らしながら研究を続けたい」という相談を受けたことがある。地方に住みながら月に1,2度東京に出ていくような生活スタイルをとりたいというのである。それはそれで構わないと思ったので,AIリサーチャーとして弊社に所属してもらうことにした。AIリサーチャーとは最先端のAIシステムの調査や研究を行う役割を担う人材である。
もちろん,これは自分のワークスタイルを認めさせるだけの価値がその人にあってこそのことが条件になります。そのための方法のひとつとして,本書ではAIを活用できるキャリアデザインが紹介されています。
AI人材を目指す場合の2つの道
本書では,AI人材を目指す場合の2つの道が紹介されています。
- データサイエンティストなどに転身する道
- 今いる道(今の会社の所属部署)においていかにAIを活用するかを考える道
当然,前者は難易度は高くなりますが,その分年収も跳ね上がります。
たとえばNTTデータは,データサイエンティストやエンジニアなど,高度な専門知識や技術を習得している人材確保を目的とした「アドバンスド・プロフェッショナル制度」を2018年に新設した。その制度では,優れた技術者は年収2000万円以上で処遇し,年収3000万円になる可能性もある,としている。
また,NECでは,研究職志望の新卒社員に対しては評価実績次第では新卒年収1000万円を超える給与を支給する可能性があるということを2019年に発表した。
一方,会社や職種を変えることなく,「自分の仕事をAIと結びつけられないか」を考える方法も紹介しています。本書では,このような人を「AIシナジスト」”AIを使って主業務でのシナジー(相乗効果)を生み出す人”と呼んでいます。
データサイエンティスト,AIビジネスデザイナーになる
本書では,AI人材の具体的な職種として,データサイエンティスト,AIビジネスデザイナーについて,職種,適正,転身への道について解説しています。AI人材を目指す方にとって,とても貴重な情報と言えるでしょう。
データサイエンティスト
「データサイエンティスト」は,AIを導入するためのデータ構造を設計しデータを解析しAIを実装するまでの役割を一貫して担います。似ているものに「データアナリスト」がありますが,こちらはすでに整っているデータを分析して改善点などを見つけるのが主な仕事になります。
データサイエンティストには「プログラミング・情報処理」,「数学・統計学」,「コミュニケーション・可視化」というスキルセットが求められる。
プログラミングなどの技術は必要になりますが,日本でもリカレント教育(基礎教育を終えて社会人になってからも学び直して,それを新たに就労につなげていく考え方にもとづく教育)が見直されており,20代,30代より上の世代でも,キャリアデザインをするにあたって,年齢を問われない時代になっているといいます。
AIビジネスデザイナー
「AIビジネスデザイナー」は,プロジェクトの立ち上げ段階から重要な役割を担います。AI開発を主に事業として行う企業,またはインハウスでDXやAI導入に関する経営企画を行う部署に必要とされる,AIを使ってビジネスの課題解決をすることと,そこまでの推進をフルタイムで行う人をさす,とあります。
自分でプログラミングなどはできなくてもいいが,AIの概念をしっかりと理解しているうえで経営戦略やビジネスモデルを練っていく必要がある。
0から1を生み出す構想設計と,1のものを100にする構想設計の双方が求められる。両者に求められるスキルは違うので,広範なスキルが必要となる。
今後,3〜5年といったスパンで考えると,AIビジネスデザイナーは日本の企業で最も必要とされるAI人材の1つとなるといいます。AI人材としてのキャリアアップを考えるときの参考にすると良いでしょう。
「AI人材」のケーススタディ
第5章では,ゼロからの「転向」に成功した人たちのケーススタディが紹介されます。
- 非IT企業の人事部でAIプロジェクトを先導
- 小会社への出向中にAIプロジェクトを立ち上げたベテラン経理マン
- 「リカレント教育」を受けてデータサイエンティストに転身
- 180度の方向転換で日本語教員からUXデザイナーとしてAI業界へ
前2つがAIシナジスト,後2つがAI業界の専門職にあたります。
会社員35歳からの再スタート,日本語教員からUXデザイナーなどリカレント教育を実践した例も紹介されているので,AI未経験という方も年齢に怯えず,積極的にチャレンジしてみましょう。
著者について
『“経験ゼロ”から始める AI時代の新キャリアデザイン』の著者は,石角友愛(いしずみ・ともえ)さんです。高校を中退し,米国のボーディングスクールに留学。オキシデンタルカレッジで学士取得。 2010年,ハーバードビジネススクールでMBAを取得。Googleなどでの勤務を経て,2017年パロアルトインサイトを起業。AI戦略提案からAI実装まで一貫した支援をしています。
まとめ
本書は,AIに関わったキャリアデザインについてわかる一冊です。
データサイエンティスト,AIビジネスデザイナーなどへ転身したい方,AIシナジストとしてのキャリアアップしたい方,遅すぎることはありません。「やりたい」と思ったとき,新しい道を進んでみてください。
2023.04.07
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書名 | “経験ゼロ”から始める AI時代の新キャリアデザイン |
著者 | 石角 友愛 |
出版社 | KADOKAWA |